リクルートのリクナビ新卒内定辞退率予測販売にひそむ、そもそもの問題

リクルートが新卒採用サイト「リクナビ」で保有している学生のデータをaiで分析し、算出した学生個人別の内定辞退率を企業に販売していたとして炎上しています。個人情報委員会からも勧告を受けリクルートのあり方が問われていますが、今回の事件の問題の本質はどこにあるのでしょう。

炎上したのはリクナビDMPフォローという商品

今回炎上したリクナビの新卒内定辞退率は「リクナビDMPフォロー」という商品で販売されていました。トヨタ自動車やりそなホールディングス、アフラック生命、京セラ、レオパレス21など大手企業38社に売却されたということがわかっています。

この商品は、「その企業に応募した学生が内定を辞退する可能性」を算出して提供するものでした。算出方法はAIを用いて行われていましたが、具体的なアルゴリズムは明らかにされていません。

しかし、下記のような内容だったのではないかと推測されています。

・蓄積されたビッグデータから、学生がある企業内定後に他の企業の募集ページにアクセスした履歴などの行動パターンを解析
・解析された行動パターンと現在就職活動中の学生のアクセスログを参照し、学生の辞退率を割り出す

これを行うことで採用企業は自社で内定を出す予定の学生に、内定を辞退されるリスクを予測することができます。これが予測できれば、以下のことが可能になるのです。

・内定辞退があることを前提に内定を出す総数を決めることができる
・内定辞退率が高い学生に対して、事前に内定受諾してもらうための対策を練ることができる

上記の例は優秀な新卒学生を他社に流出させたくない企業にとっては有益です。しかし、この商品には大きな問題があります。

学生の就職活動にとって極めて不利なデータ

リクナビDMPフォローによって企業に提供される内定辞退率のデータは企業にとっては確かに有益ですが、学生にとっては極めて不利なデータとなります。「この学生は内定を出しても辞退される確率が高いから採用を見送ろう」という思考の企業があってもおかしくないからです。

さらに直接採用の可否に影響はしなくても、内定辞退率がわかっていることによって内定を出すタイミングを恣意的にコントロールされる可能性はあります。「本当は今週末に内定を出すスケジュールだったけど、内定辞退率が高い学生が多いから、念の為来週末まで待ってもう少し最終合格者を増やしてからにしよう」と採用担当者が考えるのは自然です。内定者が規定の人数にたらずまたイチから足りない分を募集するよりは、辞退率を見込んだ上で一度の採用過程で多めに採用した方が業務の負担は少なくなります。

リクナビDMPフォローは「企業に学生の手の内を明かしてしまう問題のある商品」なのです。逆のパターンで考えてみましょう。リクナビが学生に対して「志望している企業の最終選考通過率をAIで分析して販売」を行うのを企業は許可するでしょうか。特定の企業への合格率を上げるレジュメや面接での回答といった攻略法が生まれ、企業が真に欲しい人材の採用を阻害することになりかねません。

企業の採用や学生の就職活動は、極めて微妙なパワーバランスで成り立っています。内定辞退率の提供はそのバランスを崩し、採用する企業に力が偏りすぎる危険があるのです。

企業はリクナビに金を払っているけど学生はタダじゃないかという指摘は正しいか

採用する企業と求職活動する学生が対等であるかは議論があるでしょう。
「企業側はリクナビの掲載料として数百万払っているけど、学生はただで利用できる。企業に対して有利な作りになるのは当たり前ではないか」という指摘も一理あります。

しかし、そもそもリクナビのような求人サイトは労働基準法や職業安定法に深く関わっており、労働者の権利を守ると言う大前提の法を犯してはなりません。厚生労働省によると、今回のリクナビDMPフォローによる内定辞退率の企業への提供は、労働者の情報を加工して販売する「職業紹介事業」に分類される可能性があります。職業紹介事業は非常に法規制が厳しく、リクナビDMPフォローは法に抵触しているかもしれないのです。

リクナビに求人広告を掲載するためにお金を払っていようがいまいが、学生より企業優位という考え方には全く直結しないことを、企業の採用担当者はもう一度肝に銘じる必要があります。 求人サイトは採用企業と求職者が平等にマッチングする場に過ぎないのです。

内定辞退率を知って内定辞退を防ごうというのがそもそも短絡的な考え

リクナビDMPフォローを導入した企業によると「導入目的は内定辞退を防ぐため」ということです。しかし、本来内定辞退をされる理由は「他社の方が魅力的な企業だから」というところに尽きます。内定辞退率が低い企業は「外部に向けてPRする内容と実際の就労環境に落差がない」「採用過程で企業の理念や社風への共感を高めるべく、企業と学生のエンゲージメントの強化が行われている」のです。

リクナビDMPフォローのような高額な採用ツールを使うことによって、付け焼刃的な内定辞退率の低下を目指すのは、最終的に企業の採用力を低下させかねません。企業は求人企業が提供するようなデータに踊らされることなく、自社の魅力を堅実に高めていく努力が必要なのです。

関連記事

  1. SNSを求人に活用しよう!ソーシャルリクルーティングとは

  2. 無料でGoogleのトップページに求人情報が表示される?Google …

  3. 代理店は稼げる副業!個人で始められる広告代理店業

  4. 「マイナビバイト」と「LINEバイト」が業務提携

  5. マイナビ転職求人広告掲載

    マイナビバイト、マイナビ転職の求人広告掲載

  6. @タイプ、女の転職@タイプの求人広告掲載